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「少年の試合もJリーグの試合も、何も変わることはありません。一試合、一試合、どれだけ選手のために仕事ができるか、ということが大切です。僕自身が審判として評価されたいという思いはないんです。選手がそれぞれの夢に近づいてくれる、それがすごく僕にとってのモチベーションになるし、審判をしていて一番面白いことです。僕が関わった試合で選手が活躍して、日本代表に選ばれたり、海外のクラブに行く選手が生まれたり。
例えば、FIFAクラブワールドカップUAE2010で決勝戦を担当しましたが、まさかインテル(イタリア)の審判ができる機会に恵まれるとは思ってなかったですし、今、そのインテルで長友佑都選手がプレーをするとは予想できませんでした。インテルにはFIFAワールドカップ南アフリカ大会に出場していた選手も多くピッチで「元気だった?」と声をかけられたことも、とてもうれしいことでした。
「選手やサポーターから審判は敵視されがちですが、敵ではないんです。審判は選手のためにあるということが理解されない場合があることもあるかもしれません。。でも、私が審判をする時には、この試合が選手たちにとって未来に輝く1試合になるんだ、ということを思ってレフェリングしています。
審判がそういう思いを持っていたら、選手にもサポーターにも保護者のみなさんにも受け入れてもらえるのではないでしょうか。サッカーは相手より点が取れれば勝利するスポーツです。そのスポーツをサポートするのが審判で、”(審判は)選手のためにいる”のです。イエローカードやレッドカードをもらう選手がいますが、その選手の人間性が悪いわけではありません。ただ、カードに値する行為をしてしまっただけ。罰則されるのはその「行為」であって、その「人」ではありません。審判がカードを出すときには、「今の行為はイエローカードに値しますので告知します」という気持ちを持ってその選手に対してではなく、フィールド全体に行き渡るように示すと、ゲームのントロールに有効的だと思います。
“カードをもらうようなことをしてしまったんだんな”と選手が感じられるように接することができれば、選手はフェアプレーの心を思い出し、プレーに集中してくれるはずです。 ワールドカップでも、Jリーグでもジュニアの試合でも、カードに値する行為に違いはないので、同じように対応する。そうすることで、その選手が、未来の大事な試合で同じような行為でカードをもらわなくなることに繋がる。ですから、カードに値する行為があった時には選手の年齢やカテゴリーに関係なく、ちゃんとカードを提示することが選手のためにも大切なことです。
「審判はいつも慌てず騒がず、凛としていること。少なくともフィールドにいる22人の気持ちや行動をコントロールしなければならない存在なのです。そのためには自分自身の気持ちをコントロールすることがとても大切になります。 小学生の試合は8人制サッカーが主体になり、主審がひとりでゲームをコントロールすることも多くなるかもしれません。正しくジャッジをするためには、プレーが見えるところ、すなわち自分が自信をもって判断できるところに動く必要があります。審判の理想な動き方として対角線審判法がありますが、たとえそれを逸脱しても、(選手のチャレンジやラストタッチが見える)正しい判断ができる場所から判定すれば、選手は審判の判定を受け入れ、プレーに集中することが出来ます。自分が走る一歩が、選手のための一歩であるということを常に忘れずにいること。
審判員も人間です。時には判定ミスが起きることもありますが、それも含めて選手たちはサッカーと付き合っていかなければいけません。審判員として、『判定ミスもあったけれど、ピッチ(試合)に来た選手ために自分はちゃんと頑張ったんだ』と、タイムアップの時に思えることが最も重要だと思います。うまく終わらせようとか、とにかく走りまくろうとか、自分のためでなく選手のために出来ることは何かということを念頭に置いてレフェリングをしてみてください。