「「いいモノを安く」はダメ 未来工業創業者・山田昭男氏」:イザ!.
話の肖像画】日本一幸せな会社(中)
--日本の経済は低迷続き、何が悪いんでしょう?
山田 衰退の元凶は「いいモノを安く売ろう」という発想だね。その先にあるのは過当競争。これでどうやって儲(もう)かるんですか? アメリカの製造業の経常利益率は平均で35%なのに、日本の製造業は3・5%しかない。日本の方が技術は断然、優秀なのにおかしいでしょ。
試しに銀座を歩いてごらんなさいよ。今や外国の有名ブランドの店ばかり。品質は日本製品の方が上だけど、「高い方(外国ブランド)」が売れる。そういう商売を日本がやらないといけないのに価格競争で疲弊してしまっているんだ。付加価値のある、差別化した商品を作り「高く売る」ことを考えなきゃダメ。
--だけど、日本の「ものづくり」の伝統も今や風前のともしび…
山田 危ないね。敵(中国や韓国)が随分、伸びてきたからな。日本の企業で60歳定年になった技術者を、韓国企業などが倍の給料で引っ張っていく。当然、先端技術もどんどん外国へ流れるわけですよ。
だからウチは定年を70歳にし、60歳を過ぎても給料が下がらないようにした。ヨソからは「60歳、70歳で生産性が向上するんですか?」って、よく聞かれるけど、それは重要じゃない。一番、働き盛りの30代、40代の社員が、その制度に感動して、がむしゃらに働く気になるわけですよ。「オレはこの会社に骨を埋める」ってね。
日本の技術者 「優秀さ」が弱点
社員に金の延べ棒 太っ腹な報酬制度
「デキる男」は仕事も帰宅も早い
--はやりの「成果主義」にも反対してますね
山田 人間が人間を評価する以上、「感情」が必ず入る。虫が好かない部下だとか、上司に、お中元、お歳暮を贈った、贈らないで、評価が決まってしまいかねないでしょ。だからウチの給料は平等。
よく経営コンサルタントがいう「2・6・2(働かない社員が必ず2割いる)」なんて法則もあり得ないと思っている。ちゃんとした待遇を与えれば「しっかり働かねば」という気持ちになるもんですよ。
--でも、イマドキの若い社員はどうですか。がむしゃらに働いた世代とは気質が違うでしょう
山田 それは、「扱い」を間違えているからですよ。日本が戦争に負けたのが昭和20年。それからたった23年間(同43年)で、世界2位の経済大国になっている。そのときは、ほぼ全員が「正社員」だった。
“失われた20年”の間に企業は随分、派遣社員やアルバイトに切り替えたけど、GDPは伸びていないでしょ。社員が幸せを感じるには、やはりそれなりの待遇が必要。派遣社員のままでは技術や営業のやり方を必死で覚えようという気にはならんしね。
--ただ、若い世代の中には、「派遣社員やフリーターの方が気楽でいい」という人もいます
山田 それは「教育」が悪い。確かに今の日本はデフレの世の中で、年収180万円でも食うには困らないかもしれんが、そのまま、40歳になったらどうするの?
戦後、日本の教育は、子供たちを「バカにする教育」をやってきたとしか思えないんだよ。「考えるな」「皆と同じことをやりなさい」という教育だね。だから僕は、制服や給食も反対。全部同じで横並びでは、何とか工夫しようという発想が起きないでしょ。(喜多由浩)
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