大和 帰還セズ ~運命の特攻作戦~
~大和搭乗員の著書から抜粋~
日本は進歩ということを軽んじすぎた。
私的な潔癖や特技に拘って真の進歩を忘れていた。
進歩のない者は決して勝たない。
ならば負けて進歩することが最上の道だ。
敗れて目覚める———–
それ以外にどうして日本が救われるか?
今、目覚めずしていつ救われるか?
俺たちはその先駆けになるのだ。
日本の新生に先駆けて散る。
まさに本望じゃないか。
◎内容◎
1945年(昭和20年)4月7日 この日、東シナ海の海上において 歴史に残る壮絶な死闘が繰りひろげられていた。
一億特攻、全国民玉砕のスローガンが叫ばれ 世界を驚愕させた悲壮な作戦が展開されていた。
『沖縄海域に進行する米艦隊を捕捉し 体当たり攻撃を敢行せよ』
神風特別攻撃隊の出現である。
戦局悪化から米軍を上陸させたら日本は滅亡する。
郷土は焼き尽くされて 愛する者達は殺され犯され、奴隷と化してしまう。
祖国のため。愛する人のため。 生命や財産よりも、もっと尊い価値があると信じて 若者達は大空へと飛び立って行った。
『我々の生命は講和の条件にも
その後の日本人の運命にも繋がっていますよ。
そう・・・民族の誇りに』
特攻に遭った米兵達の中には神風を恐れ 神経症を患い錯乱状態に陥った者が続出したという。
後に神風は米軍兵士に敬意を抱かれ その武功を称えられている。
時を同じく戦艦大和もまた 生還を期さない水上特攻部隊の旗艦として
9隻の護衛艦と共に一路沖縄に向け進撃していた。
「大和特攻」である。
『これより第2艦隊は全兵力を以って
沖縄周辺の敵艦隊に対し壮烈無比の突入を決行せんとす。
これは帝国海軍の伝統を発揚すると共に
その栄光を後世に伝えんとするに他ならず。
皇国の興廃はまさににこの一挙にあり。
各員は主旨奮戦、捨て身の攻撃精神を発揮し
日本海軍最後の艦隊として全国民の期待に応え、
皇国無窮の礎を確立すべし』
相対したのは米軍空母から飛び立った艦載機。
それは空を覆いつくす程の大編隊だった・・・・
沖縄本島では凄惨な総力戦が展開されていた。
少年や少女たちまでもが 顧みることなく防衛召集に参加。
多くの一般住民が戦火の中に身を投じた。
『若き婦人は率先、軍に身を捧げ、
看護、炊事婦はもとより砲弾運びや挺身斬込隊すら申出るものあり。
沖縄県民、斯く戦へり。
県民に対し後世特別の御高配を賜らんことを』
最後まで戦って玉砕する。
敵国と戦わずして敗北することを 当時の日本人は選ばなかったのである。
一億総特攻の先駆けとして一命を捧げる戦いに臨んだ彼らは
その命の意味づけを 新しい日本の未来に求めた。
その先人達の気持ちを 今の我々、今の日本は
本当にその言葉の意味を活かしているだろうか?
戦争は悲劇である。
しかし、成果がなければ 全てが無駄であるという人は
人間の美しさ 日本の伝統を知り得ぬ人だろう。
勝った戦争はもちろん 負けた戦争にも物語はある。
最後まで闘い抜いた若者達の物語は決してその光を失わない。
あの壮大な負け戦の中で強烈に輝くものこそが
陸に、空に、海に散って逝った若者達の闘争心である。
※この記事で使用している画像は既にパブリックドメインとなっているものを使用しています。
コメント